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株式会社パトライト 吉川貴之氏【知財部インタビュー】

企業で自社技術の権利化・知財活用に取り組む知財部の方々へ、普段の業務や企業全体の知財戦略についてお話を伺う「知財部インタビュー」の企画。

今回は、株式会社パトライト知財・デザイン課の吉川貴之氏にお話を伺いました。

知財との出会い

弊社に入社後、最初の配属は特許室でした。はじめのうちは権利維持手続やISO9001認証規格の取得支援業務等に携わり、3年ほど開発企画部門で中期計画の策定支援をしていました。

その後いくつかの部署を経て、現在の知財・デザイン課につながる知的財産チームに異動し、今に至ります。

私はよく覚えていなかったのですが、入社前の新入社員コメントにて「特許をとりたい」と書いていたらしく、思えばその時から知財への意識はあったと思います。

現在の業務

とにかく知財に関することは何でもやっています。調査、発明の発掘、社内教育、知財契約、権利の維持…業務の幅が広くメインの業務を決めるのは難しいですね。

権利も特許・知財・商標すべてを扱います。会社全体の業務の内容次第で何の権利のどの業務を担当するかが変わるので、ずっと特許の調査をしている日もあれば、権利化関連の業務だけしばらくやっていることもあります。今の時期(年度末)は来年度の予定の策定の比重が大きくなります。

権利化については海外の商標・意匠案件、内外国の特許案件は弁理士の先生に頼みますが、原則として国内の商標・意匠案件は出願まで社内で行っています。

特許は案件によって業務の範囲が異なります。構造物関係の特許については発明者から上がってきたものをディスカッションし、そのうえで弁理士さんに依頼をしています。モノづくりがないものに関しては発掘も担当することが多いです。弊社も何万件もの知財を出願しているわけではないので、権利化にあたってノウハウがたまっている専門家の方にアドバイスを頂く形ですね。

開発現場の啓発啓蒙活動を行うにあたって、「IPリーダー会(知財推進委員会)」という開発担当者と知財側が参画の月次委員会で、調査インフラに関する選定や発明発掘活動等を通じ、相互に研鑽を図ってきております。

知財部への配属も前任者の退職がきっかけでして、引継ぎ期間が長くあったわけではないのでこの委員会や他部署での業務は大変役に立ちました。

知財の活用について

現在弊社は意匠や特許を含む知財に力を入れるようにしています。

まだ不十分で発展途上ですが、これは戦後の創業期に知財権取得を失念したことで経営危機に、その後係争もありオーナー自身が知財にかなり高い関心を示すようになったことがきっかけと理解しています。

もっとも、最近では、広い意味では弊社商品のソリューションパートーナーとコラボしてマーケティングを行っていることが知財活用に当たりますね。弊社は「パトライト®」や無線通信システムを使ったデータ収集システムの「エアグリッド®」というブランドを国内向けに展開していますが、これらの製品のお客様とコラボした動画を出してブランド名を使用しています。

一方困っていることもあります。「パトライト®」や「シグナル・タワー®」という登録商標は、市場シェアが高くなりすぎてお客様などが誤って普通名称のように利用していることも一部散見され、モグラたたきのように対処していっている状態です。

現状弊社では、知的財産権を他社へライセンスしてマネタイズではなく、他の商品との差別化、顧客へのアプローチ手段として利用することが多いです。

とある勉強会で、最近模倣ということをテーマに語ることが少なくなったと話題がありました。「技術の模倣」が話題になっていた頃とは社会情勢も異なってきています。世界規模で言えば同じような商品でも需要が細分化してきています。例えば品質がよく値段が高いものを欲しがる層、技術を「引き算」して値段を安く抑えた製品を欲しがる層、様々な人がいます。

それぞれのニーズにこたえた商品はコンセプトが違うため、広い意味では「模倣」であっても、権利侵害はしないことになる。逆にお客様の需要が重なるような製品についてはPRするポイントを真似されないような戦略をとることになると思います。それが特許なのか意匠なのか、商標なのか、それは製品によって違うので一概にはいえないですけどね。

現在、弊社では例えばAWS®やAZURE®などのプラットフォームと連携し、直接人間が見聞きできない事象を光や音で簡単に伝達するインターフェースとして幅広く訴求を続けております。

私たちの仕事は一般消費者の方に目に触れやすい緊急車両だけでなく、半導体、搬送機械、道路、建設、オフィスオートメーション、ファクトリーオートメーションなど幅広い業界にかかわっています。ハードルは高くなりますが、提供商品が価格競争にならないよう、少しでもお客様や使用シーンを想像し施策を出せるように気を付けています。

今後の展望

モノづくり自体は今後もなくならないと思っています。ですがモノづくりが提供できる価値を強化していきたいとは考えています。

今後、私たちがいる市場がどうなっていくかというのははっきりとは分からないところではありますが、DXの流れに乗り遅れないように各社各様に個性を出していくという段階に入ると思います。

弊社自身もDXを進めていく側面もありますし、お客様もDXを進めていくということになるでしょうね。お客様がDXを進める過程で弊社の製品が活きるなら、それはありがたいですね。