ニュースの概要
一対の球体を肌に押し付けて転がす「美容ローラー」の特許を侵害されたとして、製造販売元のMTG(名古屋市)がファイブスター(大阪市)に損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(林道晴裁判長)はファイブ社の上告を受理しない決定をしました。
その結果、2021年3月13日ファイブスター製品の一部に特許侵害を認め、約4億4千万円の支払いを命じた二審・知財高裁判決が確定しました。
対象となった特許について
今回MTGが侵害を主張したのは、ローラーの軸受けに関する特許です(特許番号6121026【0026】)。
「(棒状の)ハンドルは肌面に対してローラーが当接する角度の調整がしやすいため、操作性が向上する。また、ハンドルの握りやすさを維持しつつ、美容器全体をコンパクトに形成することができたため、旅行などで持ち運ぶのに適している。」と記載されるこの特許について、今回ファイブスター社が製造した製品がその類似品として、特許侵害が問題となりました。
損害額が高額になった理由
特許法102条1項は、侵害者の譲渡数量×特許権者の単位数量あたりの利益額を損害額として算定しています。具体的に、本件美容ローラーは〈ファイブスターの販売数×1つ2万4千円〉で算定しました。
特許が商品に寄与した程度が一部であり、賠償額が1億1千万円であるとした一審に対して、二審では約4億4千万円の賠償が認められました。その背景としては、二審が、損害は特許侵害によって減少した販売数を基に算定すべきであり、商品の寄与の程度を考えるものではないと判断した点にあります。
その上でMTGの「リファ カラット」が約2万4千円だったのに対し、ファイブ社製品は3千~5千円と廉価で、市場が同一だとは言えないと認定しました。ファイブ社製品の販売数の約5割が、MTGの販売減に影響したとして損害額を算定しました。