ニュースなどでも最近耳にすることが増えた「ビジネスモデル特許」という言葉。その言葉自体は知っているが、実は中身についてよく知らないという方も多いとか。今回はそんな「ビジネスモデル特許」について解説していきます。
単に「ビジネスモデル」というだけでは特許を受けることはできない
「ビジネスモデル特許」という用語から、いわゆるビジネスモデルそれ自体が特許になると思う方もいるかもしれませんが、実はそうではないので注意が必要です。
まず、ビジネスモデル特許を取得する大前提として、特許法で定められている特許取得の要件を満たす必要があります。
特許法では、第29条で「産業上利用することができる発明をした者は、次に掲げる発明を除き、 その発明について特許を受けることができる」と規定していますが、ビジネスモデル特許においても「産業上利用」できることや「発明」に該当する必要があります。
特許要件について、詳しくは以下を参照ください。
『特許取得の要件とは?』(出典:Tokkyo.Ai)
つまり、単に「ビジネスモデル」であるだけでは「ビジネスモデル特許」として特許権を取得し、保護を受けることはできません。
しかし、これだけでは正直分かりにくいというのが本音かと思います。具体的にみていきましょう。
「ビジネスモデル特許」の対象
インターネットで「ビジネスモデル特許」について検索をすると、さまざまな定義や説明が書かれていますが、
ズバリ、「コンピューターシステムと組み合わされたビジネス方法」が、ビジネスモデル特許の対象です。
近年、動画プラットフォームサービスやオンライン決済システムをはじめ、IT技術を駆使したサービスが増加していますが、これらの中にはビジネスモデルそれ自体とIT技術が一体化し、ITの技術的な要素がビジネスモデルに含まれているということがあります。
そういったビジネスモデルは特許要件を満たせば特許権の対象となります。
日本弁理士会のHPでも以下の通り解説されています。
ビジネスモデル特許とは、仕事の仕組みに採り入れられる情報技術(IT)などの新しい技術に与えられる特許です。具体例としては、インターネットを通じた電子商取引のビジネス方法やコンピューターを駆使した高度な金融技術の発明を対象とした特許ですが法律上の正確な定義はなく、一般に、コンピュータ・ソフトウェア発明の一類型と位置付けられています。
出典:日本弁理士会 関西会(http://www.kjpaa.jp/qa/46408.html)
「ビジネスモデル特許」の具体例
※名称クリックで実際の特許ページに飛べます。
事例1
Amazonの『ワンクリック特許』
どういう特許?
・1度のクリックで商品を購入できる仕組み
・複数の注文を1つにまとめて配送するための仕組み
これはECプラットフォーム上で、フォーム入力など料金の支払いに必要な操作を簡略化し、ユーザーがワンクリックで商品を買えるようにするという特許です。
また、購入情報が紐づけられ、複数の注文をひとつにまとめて発送することで、ユーザーの利便性を向上させるという特許です。
Amazonはこの発明によりユーザーの離脱率が下がり、キャッシュフローを改善したという話もあります。
事例2
TSUTAYAの「レンタル商品返却システム」
どういう特許?
・商品が、いつ貸し出され、いつポストに返却されたかを管理する仕組み
レンタルCD、DVDなどで有名なTSUTAYAの親会社であるカルチュア・コンビニエンス・クラブ株式会社の特許です。
TSUTAYAといえば、レンタルした商品をポストに返却することができるという便利なサービスがあることで有名ですが、その仕組みについての特許です。商品に、固有の識別子を付け、そのデータをレンタル店と配送業者で認証し、貸し出しデータと、改修した時のデータを管理し、商品が返却された日時を特定するといったことができるようです。
ビジネスモデル特許を取得するメリット・デメリット
ビジネスモデル特許を取得するメリットは、他社に対して「参入障壁」を設けることができる点です。
画期的で便利な仕組みをつくり、「ビジネスモデル特許」として登録しておくと、同業に対して大きなアドバンテージとなります。
「ビジネスモデル特許」を取得するデメリットは、ビジネスモデルの仕組みが公開されてしまう点です。
仕組みが公開されると、他社がそれを見て真似をしたりするようになるかもしれません。
権利を取得するときは「どこまで権利範囲に含むべきか」を考えて取得することがポイントになります。
少しでも不安な方は専門家に相談することをお勧めします。