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意匠法の対象が増える!2020年の改正意匠法とは?映し出されるクラウド上の画像なども保護対象に

意匠法とは、デザインの保護を図る法律です。しかし近年は、インターネットビジネスの発展やIoTなどの革新的な技術が普及した影響で、以前の意匠法ではデザインを十分に保護できなくなっています。

そんな事情を踏まえて、現代に即した改正意匠法が2020年に施行されます。今回の法改正では、以前の意匠法と比べて抜本的な変更が数多く行われています。特に重要となるのが、保護対象となるデザインの拡充です。

そこで今回は、改正意匠法の主要な変更点について分かりやすく解説します。

画像の意匠に関する保護対象の拡大

以前の意匠法では、物品にあらかじめ組み込まれた画像のみが保護の対象となっていました。しかし近年は、インターネットやクラウドをユーザーが利用する際のみ、画像が表示されるケースが増えています。こうした画像は元々機器に組み込まれているわけではないため、改正前の意匠法では保護することができませんでした。

そこで改正意匠法では、機器に組み込まれているかどうかに関係なく、画像デザイン自体を意匠として登録できるように変更されます。これにより、インターネット上やクラウド上の画像が模倣されるリスクが軽減するため、より一層企業による画像デザインへの投資が促進すると考えられます。

また、壁や人体などに投影される画像デザインも保護の対象となるため、壁・人体に画像を投影させ、その画像経由で機器を操作する最新技術の発展にもつながるでしょう。

建築物の意匠の保護対象化

改正前の意匠法では、有体物である動産のみを保護対象としていたため、不動産である建築物のデザインについては、意匠としては認められませんでした。しかし実際のビジネスシーンを見渡すと、自社のブランディングを目的に建築家やデザイナーに、デザイン性の高い店舗を設計・建築してもらうケースは少なくありません。 こうしたビジネスの実情に合わせる形で、今回の改正意匠法では建築物のデザインも、意匠として認められるようになります。この変更により、建築物のデザインが模倣されるリスクが軽減され、企業のブランディングが問題なく実施されるようになるでしょう。

内装の意匠の保護対象化

改正意匠法では、建築物の内部に施された装飾(内装)についても、保護の対象となります。以前の意匠法では、内装が不動産の一種であることに加えて、1つの物品につき1つの権利しか認められない「一意匠一出願の原則」に反していることも相まって、内装デザインの意匠は認められませんでした。

しかし建築物と同様に、店舗の内装などにより他社との差別化やブランディングを図る企業は少なくありません。そうした実情を踏まえて、建築物と同時に内装デザインについても意匠が認められることとなったわけです。

これにより、たとえばおしゃれなカフェの独創的な内装が認められるようになるため、店舗のデザイン性で勝負したい企業にとっては有利な変更と考えられます。

関連意匠制度の拡充

関連意匠制度とは、自身が登録している意匠と似ている意匠(関連意匠)について意匠登録を受けることができる制度です。意匠の効力は似ている物品にまで及ぶため、最初に出願された意匠に似ている意匠は原則出願が認められません。同一人物までにこの原則を貫くのは不合理とのことで、関連意匠制度は設けられています。

同一出願人が似ている意匠を登録できるように考慮した制度ではあるものの、実際にはほとんど役に立たない制度でした。というのも、関連意匠の出願可能期間が、最初のデザインについて出願したタイミングから数えておよそ8ヶ月以内と非常に短かったからです。

あまりにも期間が短すぎたため、たとえば最初に意匠登録した商品に関して、似ている製品をシリーズ物として販売したいと思っても、関連意匠の出願にシリーズ製品の開発が間に合わないケースが出てきます。

そこで改正意匠法では、関連意匠の出願期間を約8ヶ月から、本意匠の出願日から10年以内まで延長しました。大幅な延長が行われることで、以前よりも関連意匠を活用しやすくなるでしょう。

その他の改正点

改正意匠法では、保護対象の拡充のみならず様々な変更が行われます。上記以外の改正点を下記にてまとめましたので、参考にしていただければと思います。

  • 存続期間の変更(「出願日から25年が経過した日」に変更)
  • 創作非容易性の水準の明確化
  • 複数意匠一括出願の導入
  • 組物の部分意匠の導入
  • 間接侵害規定の拡充
  • 手続救済規定の拡充
  • 物品区分の扱いの見直し
  • 損害賠償額算定方法の見直し

より詳しく知りたい方は、特許庁が公表している意匠法改正に関するパンフレット(下記リンク先)をご参照ください。

参考:イノベーション・ブランド構築に資する意匠法改正 – 特許庁

まとめ

今回お伝えしたとおり、改正意匠法は以前の意匠法とは大幅に変更が加えられます。意匠法の改正は、企業のブランディングや差別化戦略にとって大きく有利に働きます。

デザイン性で競争優位性を確立したい企業は、積極的に新しい改正意匠法を活用するのがベストでしょう。