意匠とは
「意匠」とは、物品の形状、模様若しくは色彩又はこれらの結合、建築物の形状であって、視覚を通じて美感を起こさせるものをいいます(意匠法第2条1項)。具体的には、自動車や文房具、テーブル、パソコンなどの工業製品、衣服などの物品がこれにあたります。そして意匠は意匠法により保護されています。
意匠法の目的
意匠法は、意匠の保護及び利用を図ることにより、意匠の創作を奨励し、もって産業の発達に寄与することを目的としています(意匠法第1条)。
このように意匠法は、工業製品や物品などの意匠を保護して産業の発達に寄与するために、意匠の保護と利用の調和を図っています。
そして、意匠法の保護を受けるためには特許庁に意匠登録出願し、設定の登録(意匠法第20条)をすることが必要です。意匠登録が完了すれば、意匠権者として、その登録意匠と、その意匠に類似する範囲でその意匠を独占的に使用することができます。
なお、意匠権は、原則として出願日から25年で消滅します。消滅した後は、パブリックなものとして誰でも利用可能になります(意匠法第21条)。
意匠権の対象
これらの目的から、意匠として登録されるためには以下の点を満たしている必要があります。
1.まず原則として、模様・色彩・デザインなどが製品に付されているなど、市場で取引の対象となり流通する物品と関連付けられている必要があります(意匠法第2条1項)。そして、物品の一部に特徴があるものについてもその一部分について登録することができます(部分意匠といいます)。
また、物品ではありませんが、物品の機能を果たすために必要な画像表示(時計のデジタル表示や画面に表示されるデジタルの操作ボタン)も物理的な操作ボタンを置き換えたものであることから意匠として登録が可能となっています。
なお、これらに関しては「視覚を通じて」認識できることすなわち肉眼で認識することができる必要があります。したがって、原則としては肉眼で見えない小さなものについては意匠登録をすることができません。ただし、小さなものであっても拡大鏡などで観察するのが通常である場合には、産業界や社会の実情から判断して、「意匠に該当する」と判断されているケースもあります(平成17年(行ケ)第10679)。ここでは創作を奨励して産業の発達に寄与するという意匠法の目的から意匠権として認めるのが適切かという観点から検討され、意匠権の対象として認めると判断されています。
2.次に、意匠法の目的が産業の発達に寄与することを目的としていることから、工業上利用可能なものである必要があります(意匠法第3条1項柱書)。
3.そして、既に公知となっている意匠については、意匠法による保護を与えるべき理由がないこと、これに意匠法による保護を与えると、既に使用している他者が使用できなくなってしまうことから「公然知られた意匠や既に刊行物に記載されている意匠」は新規性がないとして登録を受けることができません(意匠法第3条1項各号)。
4.その意匠の属する分野における通常の知識を有するものが容易に創作できる意匠の場合は、保護の必要性を欠き、また、保護することで産業の発達を阻害してしまう可能性があるので、容易に創作ができる意匠は登録を受けることができません(意匠法第3条2項)。
5.もちろん、同一または類似の意匠が先に出願されている場合、公益的な見地から登録することが適切でない公序良俗に反するような意匠(例えば、他国の国旗を使ったもの等)や、他人の業務に係る物品等と混同を生ずるおそれがある意匠は登録を受けることができません(意匠法第5条1項各号)。
意匠登録をうけるには
まとめると、意匠登録を受けるためには、その意匠が
- 視覚を通じて美感を生じさせる物品であること
- 工業上利用可能であること
- 新規性を有すること
- 容易に創作できるものでないこと
- 公序良俗に反しないこと
という項目を満たす必要があります。