ニュースの概要
仮想OSを製造するエミュレーションメーカーのCorelliumに対してAppleが提起していた訴訟が取り下げられていたことが分かりました。
Corelliumは、iOSの仮想デスクトップソフトを作成する企業です。仮想デスクトップの構築によりエンジニアなどがセキュリティの脆弱性を発見することが容易になるとされています。
Corelliumの創業者David Wang氏はAzimuth Securityに在籍していた頃、AppleがFBIのロック解除要請を拒否したiPhoneのパスワード解除をしており、その頃からの因縁を指摘するメディアもあります。
フェアユースとは
今回の訴訟に先立ってAppleとCorelliumの間で起こされていた訴訟では、仮想iOSを作成したことがAppleのプログラムの著作権を侵害することが主張されていました。
プログラムの複製が著作権を侵害する可能性については以下の記事をご覧ください
「MacOSの複製容疑で逮捕者」https://www.tokkyo.ai/news/copyright-news/macos-copy/
これらの主張に対して、裁判所は仮想iOSによるバグの探索は「フェアユース(Fair use)」に該当するため、その限りで複製が許される旨判決を出しています。
このフェアユース、日本の著作権法では耳なじみのない言葉かもしれません。いったいどのような概念なのでしょうか。
フェアユースは、アメリカなどで認められている「特定の判断基準を満たすことで著作権者の許諾なく著作物を利用しても著作権の侵害とならない」とする概念です。
概念自体は日本の著作権法が定める「引用」と似ていますが、一般的な著作権利用全体に適用されうる点で異なっています。このような観点で言うと日本の著作権法ではフェアユースに相当する概念はありません。
フェアユースの判断基準は
主として
1.利用の目的と正確
2.著作物の性質
3.著作物全体のうち利用された部分の量および重要性
4.著作物の潜在的利用または価値に対する影響
となっており、事例に応じてこれら以外の要素も考慮することがあります。
両当事者は和解の内容等を発表しておらず詳細は不明ですが、CorelliumによるiOSの複製が著作権違反でないと判断された前訴の判決がこれらの結論に影響を与えた可能性があるといえるでしょう。