width=

ワクチン技術開放求め米大統領へ圧力、「特許開放」とは?

ニュースの概要

新型コロナウイルスのワクチンをめぐって、特許権の開放を迫る動きが加速しています。バイデン政権に対して世界の元首脳175人が、特許を開放するよう書簡を送ったことが判明しました。

なぜバイデン大統領へ書簡が送られるのか

ワクチン関連知的財産の開放を求める動きは、昨年終わりごろからインドなどのWTOルールの停止要望という形で大きく広がり、現在も議論が交わされています。

WTOの枠組みを超えてバイデン大統領に内外から積極的な働きかけがされている理由としては、米国が持つ国際的影響力は当然として、さらに以下の2つの理由が考えられます。

一つは、大規模製薬会社の存在です。

アメリカにはファイザー、リジェネロンをはじめとする有力な製薬企業が多くあります。医薬品に関して知的財産を保有しているのはこれら企業ですから、バイデン氏への書簡は間接的にでもここに働きかけようとする動きの一つと考えられそうです。

もう一つは特許の強制実施権の存在です。

強制実施権とは、アメリカをはじめとする各国で認められている制度で、一定の条件のもと、政府が特許権の実施に介入する権限のことです。バイデン大統領に圧力をかけるこれらの行為は、米国内の有力な製薬企業に対して強制実施権を実行するよう迫る動きとも解釈できます。

強制実施権についてはこちらの記事も併せてご覧ください。「感染広がるコロナウイルスの「ワクチン問題」 ― 特許・知財が抱える問題-Tokkyo.Ai」

「WTOルール」の免除とは?

WTOルールの免除とは、いわゆるTRIPS協定と呼ばれる通商関連分野における知的財産の保護担保に関する合意を一時的に停止することです。

すなわち、通常はTRIPSの加盟国は、自国内で特許権が保護されていること、特許権の価値が担保されていることを他の加盟国に対して確約する義務があります。今回一時的にその義務を免除することで、各国が特許権を保護しなくてもよい状況を作り、積極的に特許権を流通させようとすることが、インドや南アフリカの狙いです。

知財を積極的に開放して活用するために

新型コロナ禍においては、あらゆる分野で既存の方法が通用しなくなる可能性があります。今回の動きも既存の枠組みから脱却する動きの一つではありますが、特許権の強制実施や特許保護ルールの免除は世界経済に与えるインパクトが大きくなります。

知財の活用・流動性の確保は、他分野においても重要視されているからこそ、知財のドラスティックなオープン化に際しては実施するか否か、実施する場合の補償はどうするのかなど慎重な判断が求められます。

知財活用を支援するTokkyo.Ai知財流通プラットフォーム

IPマーケットプレイス

はこちら