農水省、知財保護の戦略策定
農水省が長期の知財戦略を取りまとめました。2007年、2015年に続いて3度目の策定になります。 2015年の知財戦略の主眼はGI保護制度の強化や海外市場の模倣品の対策とされていました。
GIとは地理的表示の略称で、農林水産物・食品等の名称のうちその名称から産地を特定でき、産品の品質や特性が産地と結び付いているものをいいます。
GI登録を促進することで地域の産品保護を推し進め、農作物のブランドを保護することが2015年時点での主たる目的だったようです。
2015年から進展した戦略
ですが現在、ブドウでは「シャインマスカット」、イチゴの「レッドパール」や「章姫」、「紅ほっぺ」、サツマイモの「紅はるか」など日本の誇るブランド農産物が海外で無断栽培され、国外で産地化してしまう事例が多数発生しています。
このようにノウハウの流出が待ったなしの状況になっている現在、さらに具体的な施策を講じる必要性が生じ、新たに一歩踏み込んだ知財戦略をとることになりました。
現在の戦略の柱は、種苗法、家畜改良増殖法、不正競争防止法の改正などに代表される実効性のある流出防止措置です。
法改正の内容
種苗法は、種子や苗を譲渡する先を開発者が指定できるように改正がされました。開発者が流通をコントロールすることで、予期せぬ品種流出を防ぎます。
不正競争防止法は、その規制対象に新たに家畜遺伝資源が加わりました。家畜の遺伝情報の流出が問題となっている中での改正で主に和牛の品種の遺伝子や交配ノウハウを保護することを目的としています。
家畜改良増殖法は、遺伝情報のやり取りの手続を厳格にする改正がなされました。不正競争防止法と同様に和牛の品種の遺伝子等を保護することを目的としています。
今後の展開に期待
知財の態様や侵害の形態が多様になっている昨今、地域団体商標や特許法による保護など経済産業省(特許庁)管轄による地域ブランド・農作物保護とより綿密に連携した知財保護が必要になってくるでしょう。日本の競争力を取り戻す画期的な戦略が期待されます。