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「素材産業を支える特許業務と知財教育で、輝かしい明日へ」弁理士法人ブライタス パートナー弁理士 千原清誠氏インタビュー

主に材料分野、情報分野、機械分野等の技術分野を中心に大阪と東京の2都市で展開する弁理士法人ブライタス。今回は、その創設者でパートナー弁理士の千原清誠氏にお話を伺った。

知財との出会い

大学卒業後に最初に入った会社には特許出願を行う部署もありましたので、そのときに「そういう仕事(知財の仕事)があるんだ」と認識しました。

また弁理士という職業についても、その頃に「技術もわかる、法律もわかる、そういう仕事があるのか!」と具体的に意識するようになったのです。

高校時代に1年間留学していたこともあり、海外と関係する仕事ができないかという想いもあったため、「技術」×「法律」×「海外」、この3要素が掛け合わさっている、これはまさに私にピッタリな仕事ではないかと。

しかし、当時は多忙を極めており、とても弁理士試験と並行できる環境ではなかったのです。そのため特許事務所への移籍を検討し始めました。やはり事務所勤務であれば勉強との両立には理解がありますからね。

特許事務所へ

特許事務所に移籍後は、予備校にも通い始め、試験対策と仕事を両立する日々。

2013年に今の事務所を設立するまで、約14年間ほどお世話になりました。

事務所名”BRIGHTAS”に込めた想い

2013年に現在の事務所、弁理士法人ブライタスを設立しました。

「ブライタス(BRIGHTAS)」とは、 “bright(輝かしい)” と “明日(あす)” を組み合わせた造語です。

私は、「まず一番最初に従業員がありき」と思っています。

従業員がモチベーション高くいられることによって、良い仕事が提供でき、それによってお客様の信頼が高まっていって、その信頼の積み重ねが新しい仕事に繋がって、そういったサイクルだなと。

まずは従業員の皆さんが、自分たちの未来は輝かしいものである、輝かしい明日に繋がると思えるような場所にしたい。そのような想いが込められています。

素材産業における知財のポイント

私は、これまで鉄鋼関連のお仕事を多くさせていただきました。鉄鋼の歴史は古く、私が特許事務所での業務を始めた2000年頃には、特許技術を継続的に使用する必要がある一方で、基本特許の権利期間が満了していくという問題がありました。当然のことながら、技術的な革新は継続して行われているものの、先行特許公報と比較したときに、新しさを表現できないという問題が存在していました。古くからある材料メーカーに共通の課題であろうと思われますが、如何にして自分たちが過去に取得した特許を掻い潜るかを考える日々でした。

例えば、鉄鋼材料の物性は、どのような元素を鉄に溶かすかによって変化しますし、溶かして固めた後の鋼材の熱処理によっても変化します。金属組織が変化するからです。例えば、1990年ごろまでの特許出願は、どのような元素を鉄に溶かすかという点に注目した特許が多くありましたが、2000年ごろには化学組成を特定するだけでは特許になりにくくなっていました。このため、従来の技術との違いを明確にするために、パラメータを規定したり、金属組織や、炭化物などの介在物を特定したり、金属組織の大きさや形状、介在物の大きさや分散状態など、細かい条件を特定したり、と様々な苦労をしてきました。

国内特許から外国特許までシームレスに

ブライタスは、多くの外国での権利化のお手伝いをさせていただいてまいりました。ブライタスでは、外国出願が想定される案件については、国内出願の段階から様々な国の審査プラクティスを考慮して明細書を作成しています。

大手の特許事務所では、国内出願担当と、外国出願担当とが異なる、分業を行っている場合も多いと聞きます。そのような分業をすれば、作業効率は高まると思われます。しかし、自分が書いた明細書が、その後、各国でどのような審査をされるのかを知ることはとても大切だと思っています。

もちろん、外国出願担当からのフィードバックを受ければ、自分でやらなくても良いとの考え方もあろうと思いますが、ブライタスでは、自らが書いた明細書に対して各国の審査官がどのように反応するのかを知り、出願時にこう書いておけば良かったと書いた本人が感じることが何よりも大切だと考えています。このような体制は、担当者それぞれの能力向上に役立ち、そのことが担当者のモチベーションを向上させ、プロ意識を高めてくれる、ひいては、お客様の満足度向上にもつながっていると感じますね。

知財教育の取り組み

私は、日本弁理士会の「知的財産支援センター」に所属しています。同センターは、小学生、中学生、高校生に向けた知財教育コンテンツを制作しています。我々自らが演じた動画コンテンツもあります。

(弁理士会によるビデオ教材はこちら:https://www.jpaa.or.jp/activity/teaching/)

私が知財教育の取組をスタートしたのは2005年頃です。当時は、「弁理士 母校に帰る」という企画でした。せっかく苦労して取得した資格だが、他の士業に比べて知名度の低い、弁理士を子供たちに知ってもらおうという企画です。その後、各地域会で知財教育の部門ができ、全国でその輪が広がっていきました。現在は、学習指導要領にも知的財産に関する教育が含まれており、特に、中学校の教育現場において弁理士という職業を知りたいというニーズが増えているように感じます。

知財教育においては「発明」の啓蒙も重要です。例えば子どもたちに「ここにジュースとポップコーンがありますよ。片手は食べ物を口に運ぶことに使うので、もう片方の手でジュースとポップコーンの両方を持てるような食器を考えてみましょう。」といったお題を出して工作に挑戦してもらいます。

(出典:「片手でもてるかな」https://www.jpaa.or.jp/cms/wp-content/uploads/2017/03/resume_katate.pdf

こういった課題を子ども達に取り組んでもらうためのコンテンツも用意しています。発明やアイデアを生み出す体験を通して、それらを守る知的財産権の役割や重要性を学んでもらいたいという願いが込められています。

子どもたちに知財の大切さを伝えていきたい

私が弁理士登録をした数か月後に第一子が生まれ、自分だけの人生ではなくなりました。子供の成長の過程でお父さんの仕事を知ってもらいたい、そんな思いで始めたのがきっかけです。大人とばかり関わる生活をしていた私には、当初、「安くて良いものを作ろうとしている人が困ってしまう」という子供たちのピュアな疑問に対する明確な答えを持ち合わせていませんでした。子供たちのピュアな疑問に対して分かりやすい説明をすることは、とても難しく感じていましたが、お陰で説明が上手になっていったと感じています。

現在、第一子は武蔵野美術大学でプロダクトデザインを学んでいます。弁理士になることに興味がないようですが、何かを創作することに興味を持ってくれたことを嬉しく思っています。知財教育は、私のライフワークとして継続したいと考えています。

社会人にも知財の大切さを伝えていきたい

最近は、様々な企業や団体から知財に関する研修を頼まれることが多くあります。例えば、若手研究者向けの研修、知財担当者向けの研修、バイヤー向けの研修、企業経営者向けの研修など、要望に応じて様々な研修を担当させていただきました。

インプット中心の研修では、眠くなってしまったり、資料を一読して終わりというような、大きな成果が得られにくいと感じていました。ネットで検索すれば、大体のことは調べることができる時代です。このため、私は、必要かどうかわからない情報を含む、一通りの情報をインプットするような研修ではなく、参加者が考えながら、発言しながら、知財を理解してもらうような研修を提供するようにしています。最近、手ごたえを感じているのは、座談会的に、皆様が日常感じている業務上の問題点について議論しながら答えを見つける、というような形式の研修です。このような形式であれば、自分の問題として知財を捉えやすいと思っています。

小学生などへの知財教育は、半分趣味のような形で始めましたが、教育の在り方について様々な学校教員の皆様との議論をさせていただいたことが、社会人向けの研修にも役立っていると感じています。

最後に

2013年7月に、従前の事務所を引き継ぐ形でブライタスを設立しました。設立当初は仕事がない時期を過ごしましたが、徐々にお仕事を頂戴する機会が増え、それに合わせて人員も増やしました。コロナ禍前は、がむしゃらに走り続ける状態、本当に忙しすぎる日々でした。コロナ禍で、一旦仕事が落ち着き、家族との時間、仕事や経営について考える時間、同窓会その他かつて大切にしてきたネットワークを取り戻す時間、新しいネットワークを作る時間などができました。

設立から10年の節目に良い助走の期間となりました。ブライタスは、そろそろ助走の期間を追えて、次なる飛躍をしたいと考えています。

弁理士法人ブライタス:https://www.brightas.jp/