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アルミ技術と環境の融合 ‐ 日本軽金属 知財部が見る持続可能な未来 ‐ 知的財産権部 宮崎 博文 氏

知財との出会い

私は工学部の出身で、就職して最初は工場でアルミニウムの鋳造などをやっていました。この頃から特許文献自体は目にしていましたね。主にアルミニウム鋳造の製造技術に関連する特許などの文献を見ていました。

その後は縁あって特許部に移って発明を調べたりということをし始めました。

知財部門の役割

知財部門としては発明の発掘をして、それを権利化して、会社の事業に役立てるようにするのが役割です。弊社はアルミニウムに関する大抵のことはやっている会社なので、それぞれの分野ごとに出願担当者を決めて対応しています。

それ以外には弊社の製品が他社の特許を侵害していないかのチェックをしたりもしています。これは「守りの知財」という感じですね。

弊社から他社を訴えるということはあまりやっていないんですが、他社から訴えられたりとか訴えられた時にどうしたらよいかということは考えながら仕事をしています。

また、最近だと「経営に資する知財情報の提供」が求められるようになってきているので、いわゆる、IPランドスケープとかパテントマップを利用して経営層に何か情報を提供できないかということをやり始めているところです。

ここ数年は新入社員をそのまま知財部に所属させるという事例も増え、部署自体が若返りを図っていることもあり、ツールを使って色々とやり始めたという感じです。

知財×事業の「横串プロジェクト」

弊社の開発運営においては、それぞれに製造部門を持つ各事業部と、複数の事業部門、そして研究開発を行う研究所も含めて行っている「横串プロジェクト」というものがあります。

異なる事業ユニットをマーケットインの発想で横断的につなぎ、「チーム日軽金」としての一体感を高めることで総合力を発揮するのです。

そのプロジェクトごとに知財担当者を割り振って、担当者が開発会議に最初から出席するようにして情報を得るようにしてますね。

あとは各工場ごとで若手の研究発表会がありますね。そこに知財部門ができるだけ出席するようにしています。発表会の中で「これ特許取れそうだ」という話になれば、すぐに知財の人が関わることができる体制です。

この30年を見てきて

私が知財部門に入った1995年は紙で特許を調べる時代でした。その後特許検索ツールが出てきて、仕事のスピードが全然変わったのを覚えています。それこそ10倍どころじゃないっていう感じですね(笑)。

役割としては、ここ10年くらいは経営に情報を提供することが非常に求められはじめたなという印象です。

会社として、研究・営業・製造の3つがいわゆる三位一体で重なり合って仕事をしましょうということを20年前くらいから謳っていて、そこで研究職は研究だけをするのではなく、営業は営業だけじゃなく、工場は作るだけじゃなく、各部署が全社的にしっかりと組み合ってスクラムを組んで仕事をどんどんやりましょうということが求められるようになっています。その過程で、知財部としても協力するようにという声が出始めたところです。

その結果、現在では各部門間の垣根を越えた体制構築ができています。

やはり特許公報は技術情報なので、特許公報は慣れていないとなかなか読むのが難しいということもあって、知財部門が社内研修で公報の読み方を教えたり、技術用語を翻訳して研究部門のヒントになるようなものを提供したりということもしています。

もちろん発明相談も受けます。発明相談を受けた時には、特許制度の説明などもしながら、先行技術を知らなければ特許出願はできないので、簡単に特許調査をして、文面を作成したりといった具合です。

ちょっとしたきっかけがあれば、発明者と直接話をして、その話を聞きながら私の方でざっとした概略案を作って「こんな感じですか」と発明者に投げるわけです。発明者の意図と相違ないことが確認できれば、今度はそれを特事務所に持っていって出願をお願いするという進め方ですね。

WIPOGREENの取組について

弊社は、経営方針として「アルミニウムを核としたビジネスの創出を続けることによって、人々の暮らしの向上と地球環境の保護に貢献していく」というのを掲げております。まさにWIPOGREENの理念とも重なるところが大きいということで、是非ともこれに協力していくことが、同時に弊社の経営方針の実現にも適うのではないかと考えてます。

もともとアルミニウムを精錬する時に大量の電気を使うもんですから、そこを火力発電にしてしまうとCO2を排出してしまうものの、一度作ってしまえばアルミニウム自体は軽いですし、熱伝導性や反射率も良く、耐食性がよいために長期間使用し続けることもできます。したがって総合的に見るとアルミニウムの使用によって、地球環境の保護やカーボンニュートラルなどに役立つことができるのではないかと考えております。

弊社は、アルミニウムを核として様々なものを作ることができます。

具体的には、太陽光発電装置の部品であったり、最近では鳥取大学さんと共同で小型の風力発電設備の研究開発などもおこなってます。

あとは、アルミニウムを利用して紫外線を反射させることで水を浄化させる設備なども手がけています。

また、アルミニウムのリサイクルに関しても、さまざまな研究を行っています。

リサイクルするとどうしても不純物が混ざってくるんですけども、塩素やフッ化物を用いずに不純物を除去する技術開発であるとか、あるいはその不純物が入っても大丈夫なようにする合金などの技術開発もしています。そういった点もWIPOGREENに貢献できるんじゃないかと考えています。

技術移転に関して掲載をしているのは吸音技術に関するものですが、まだ風力発電をはじめとする自然エネルギー発電に関する技術は登録していないので、今後はそのあたりも登録していきたいと考えています。

アルミのことなら日軽金|日本軽金属株式会社:https://www.nikkeikin.co.jp/