対話型AIチャットツールであるChatGPTは、2022年11月末のリリース後わずか2か月程で1億人のユーザー数を突破しました。
そして、様々な場面・分野におけるChatGPTの利用が模索されており、世界中から注目されているといえます。
今回は、特許出願に当たりどのようにChatGPTを活用できるか、またAIを用いた特許出願の適法性について解説します。
ChatGPTとは?
ChatGPTは、サンフランシスコのベンチャー企業OpenAIが開発した、オリジナルの文章を生成することができる対話型AIです。OpenAIが開発した言語モデルGPT(Generative Pretrained Transformer)の後継版であるGPT-3.5をベースに開発されました。
マイクロソフト社がOpenAIに100億ドルを投資し、また検索エンジンであるBingのチャット機能にChatGPTの技術を採用したことも報じられました。
ChatGPTを用いた特許出願書類の作成
Tokkyo.Aiでも生成AI機能を実装!
今回実装した特許生成AIは、簡単なビジネスアイディアやキーワードを入力するだけで、特許文案を迅速に生成することができる。生成結果についてAIと対話できるため、アイデアのブラッシュアップや特許出願の前段階として必要とされる時間やコストの削減、そして特許の品質向上が期待される。
引用元:https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000142.000042056.html
お問合せ:https://form.legaltech.co.jp/aos/tokkyo-ai/input/
製品ページ:https://www.tokkyo.ai/pvt/
ChatGPTを用いた特許出願書類作成は適法か?
弁理士法75条は、弁理士や特許業務法人以外が報酬を得て他社の特許手続の代理を行うことを禁止しています。そのため、技術的にChatGPTを用いた特許出願書類作成が可能だとしても、違法となる可能性があり、法的な問題が存在します。
2022年、株式会社AI Samuraiは、発明の内容とそれに類似するいくつかの既存特許の情報をAIに与えることで、数分で特許書類のドラフトを作成するという新機能を発表しました。
そして同社は、2023年1月19日、この機能が弁理士法75条に抵触しないかをグレーゾーン解消制度により確認しました。その結果、同年2月18日に「書類作成行為に弁理士が関与することが確実に担保されるよう、十分かつ客観的な制度的・運用的手当を講じている限りにおいて、当該書類作成行為は弁理士法違反に該当しないと考えられる。」と経済産業省が回答し、弁理士の監督下である限りにおいて、弁理士法75条に反しないことがわかりました。
グレーゾーン解消制度とは
グレーゾーン解消制度とは、新たな事業を開始しようとしている事業者が、具体的な事業計画を示すことで、その事業計画が現行の規制の適用を受けるかどうかをあらかじめ関係省庁に確認できる制度です。
この制度は、現行の規制の適用範囲が不明確である場合に、事業者が安心して新たな事業を始められることを目的とします。
同様にグレーゾーン解消制度が用いられた事例とし、AIによる契約書レビューの適法性が問われました。この事例についての詳細についてはこちらの記事を参照してください。
参考記事:『AI契約書レビューは違法?弁護士法72条との関係を解説』
ChatGPTを用いた特許分析
入力された質問や条件に対して、膨大な情報から必要な部分を抽出し自然な文章で回答することができるChatGPTであれば、事業理解やある分野の特許検索、またある企業の特許申請件数など特許分析が可能であるとも思えます。
例えば、ChatGPTは文書の要約が可能であり、「課題」など特定観点で質問を入力することにより、査読や分類の効率化が期待できるといいます。
もっとも、特許調査業務にChatGPTを活用することは部分的には可能であるものの、情報が正確でない可能性が無視できず、参考程度にとどめる必要がありそうです。
例えば、ChatGPTでの特許検索と特許データベースでの検索では、特許番号と内容が食い違ってしまうケースが見られます。
AIチャットに関する特許出願は急増
日本におけるAIチャットの発明に関する特許の出願推移をみてみると、ここ10年で急増していることが伺えます。
どのような特許が出願されているかは、以下のボタンからチェックできます。画面左側の「検索結果の分析」ボタンから分析をおなうこともできます。
AIチャットの活用産業について可視化してみると、医療技術についても活用されていることが伺えます。
※こちらの技術の活用産業グラフ表示ツールは、有料版の機能になります。ご利用になりたい方は以下よりお問い合わせください。
まとめ
・ChatGPTを用いた特許出願書類の作成は、技術的に不足している部分があるため、全面的に活用するのはまだ先になると考えられます。
・AIによる特許出願書類の作成は、弁理士法75条に反するおそれがありますが、グレーゾーン解消制度に基づく回答により、弁理士の監督下である限りにおいて同条に反しないことがわかりました。
・ChatGPTによる特許分析も効果が期待できる部分があるものの、回答が正確でない可能性があり、参考程度にすべきであるといわれます。