引用の必要性は高い
何かを詳しく紹介するときに引用というのは非常に便利です。
例えばポケモンについて記事を書くときに、公式のポケモンの説明文やキャラクターの画像を使って記事を作成できるとしたら、0から自分で記事をつくる場合に比べて記事作成の手間もかからず、また、内容も正確なものになります。
また、論文やレポートを執筆するときに他人の書いた有名な論文を引用して自説を強めたり・・・といった場合にも引用は非常に便利です。
引用の必要性が高いのは明白ですが、引用元が著作物に該当する場合は、著作権侵害にならないかを考える必要があります。
ズバリ!問題になる権利
引用をする場合は、引用元の著作物をそのまま記載するため、著作権法上にいう「複製」にあたります。そしてブログや、Twitter、Instagram、FacebookなどのSNSでそれを行う場合は「公衆送信」にもあたります。
つまり、著作権者の許諾がない場合はこれらの権利を侵害することとなってしまいます。
しかし、著作物を使うのにすべて権利者の許諾が必要となってしまっては、非常に手間がかかり、かえって文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨に反してしまいます。
そこで、法律で認められている範囲内において、著作権者の許諾なしに「引用」することが認められています。
引用は法律で認められている範囲でOK
引用については公表された著作物は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なうことができます(著作権法32条)。 これを要素ごとに分解すると以下の3点になります。
これを要素ごとに分解すると以下の3点になります。
- 公表されている著作物であること
- 公正な慣行によること
- 引用の目的上「正当な範囲内」であること
ここでポイントになるのは2.と3.です。 2.の「公正な慣行」によるか否かという点については
- そもそも引用の必要があること
- 出典など出所を明示していること
- 著作者の意に反するような改変をしていないこと
- 引用される著作物が属する業界の慣行に従っていること
等を満たしているかという点を考慮して判断されます。
そして、3.の「正当な範囲」に該当するか否かという点については
- 明瞭区別性
⇒引用をする側の著作物と、引用される側の著作物の区別が明瞭にされていること - 主従性
⇒前者が主、後者が従の関係にあること
を軸に判断されます。
どこから引用したか「出所表示」をしないと違法?
著作権法では、引用をする際のルールとして、引用元の「出所」を表示しないといけないという「出所明示」についての規定があります。
「著作物の出所を、その複製又は利用の態様に応じ合理的と認められる方法及び程度により、明示しなければならない」(著作権法48条)。
裁判例の中には、出所明示が必要であることが「公正な慣行」であるとして、出所明示をしていない引用を著作権侵害と認定したものもありますので、引用をする際は必ず出所を明示するようにしましょう。
参考:東京地方裁判所 平成12(ワ)20058 平成13年6月13日
要約して引用することは認められる?
裁判例の中には、元の文章を要約して引用しているものについて、「引用として認められるか、認められず著作権侵害となるか」という点で争ったものもあります。
この点、ケースバイケースで引用元の趣旨に忠実な要約内容であったことから、その件に関しては、引用であると認め、著作権侵害ではないとした例もありますが、トラブルを避けるために、引用元の要約はやめておくべきでしょう。
引用のポイントと具体例
引用には、引用する部分をしっかりとわかるように区別することがポイントです。
例えば以下のような手段があります。
- 引用部分を“”や「」で区別
- 文字で区別(アンダーライン、斜体や太字にする等)
- 色で区別(引用部分の色を変える等)
- 引用部分を枠や背景で区別する
- 引用元を改変しない
これらのポイントをおさえて引用する必要があります。
引用の要件を欠くことにならないよう注意しながら引用しましょう。
「ゴーリキーの進化系であり、ワンリキーの最終進化系。筋肉が発達した体と4本の腕、アイスラッガー状の頭部の3つの突起、タラコ唇が特徴。全身は灰色で股間部にはパンツのように見える部分があるが、実際に履いているわけではなく、体の模様である。
引用元:https://wiki.xn--rckteqa2e.com/wiki/%E3%82%AB%E3%82%A4%E3%83%AA%E3%82%AD%E3%83%BC)」
まとめ
「引用」をするにはいくつかルールがあり、一見厳しいように見えるかもしれません。
しかし、忘れてはいけないのは「引用」は著作者の権利を守りながら文化の発展に寄与するためのルールであることです。大学でレポートを書く際に引用をしたり、会社で使う資料で他社が取った統計データを引用をしたりと、さまざまな場面において引用は役立ちます。
しっかりと引用のルールを守りながら、更なる文化の発展に寄与しましょう。