特許分類を活用することで、特許検索を円滑に行うことができます。特許分類は、大きく「FI」、「Fターム」、「IPC」という3種類に分けられます。この記事では、FI、Fターム、IPCの定義や概要、特許分類を用いた特許の分析手法について解説します。
「IPC」とは
IPC (International Patent Classification)とは、世界各国で共通に使用できる特許分類として作成されたものです。IPCは、主に下記の目的で作成・活用されています。
- 世界各国における共通の特許文献検索ツールの確立
- 特許文献に記載された技術へのアクセスの容易化
- 利用者への特許情報の普及
- 技術分野の現状調査の基礎とすること
IPCの分類表では、すべての技術分野をセクション、クラス、サブクラス、メイングループ、サブグループに細分化しています。
たとえば生活必需品というセクションは、農業をはじめとした複数のサブセクションに細分化されています。また、農業というサブセクションも、複数のクラスに細分化されています。したがって、IPCを解釈する際には大きな区分から小さな区分という順番で把握することが重要です。
例えば、G06F17/30というIPC分類の場合は、「G」がセクション、「06」がクラス、「F」がサブクラス、「17/30」がグループとなります。
まずは以下のセクション早見表を参考に、セクションとサブセクションを把握し、自社の調査したい分類を確認しておきましょう。
セクション | サブセクション |
A 生活必需品 | 農 業 食料品;たばこ 個人用品または家庭用品 健康;人命救助;娯楽 |
B 処理操作;運輸 | 分離;混合 成 形 印 刷 運 輸 マイクロ構造技術;ナノ技術 |
C 化学;冶金 | 化 学 冶 金 コンビナトリアル技術 |
D 繊維;紙 | 繊維または他に分類されない可とう性材料 紙 |
E 固定構造物 | 建造物 地中もしくは岩石の削孔;採鉱 |
F 機械工学; 照明;加熱; 武器;爆破 | 機関またはポンプ 工学一般 照明;加熱 武器;爆破 |
G 物理学 | 器 械 原子核工学 |
H 電 気 |
以前IPCには、実用的な検索ツールとして利用しにくいという問題や、各国が独自に特許分類の体系を確立したことで外国文献の調査が難しくなっている問題などがありました。そこで2006年1月、 「二層構造化」などが行われたIPC第8版が発行されました。
また、現在に至るまでIPCの利便性を高めるための改正案が国際的に話し合われています。したがって、今後はよりIPCが使いやすい特許分類になると考えられます。
IPC分類は特許のどの部分に書いてある?
調査した特許のIPC分類は、無料の特許検索エンジン「Tokkyo.Ai」の個別ページ、「詳細」タブより閲覧することができます。
「Fターム」とは
Fターム(File Forming Term)とは、特許審査のための先行技術調査をスピーディーに行う目的で開発された特許分類です。具体的には、FIを所定の技術分野ごとにあらゆる技術観点(目的や用途、構造など)から細区分したものとなっています。
FIで規定されるすべての技術分野は、一定の技術範囲ごとに区分されており、区分ごとに複数のFタームが設定されています。この区分されている技術範囲は「テーマ」と呼ばれています。また、テーマの技術範囲を規定するFIの範囲は「FIカバー範囲」と呼ばれます。
加えて各テーマには、対象となる技術分野を簡単に示す「テーマ名」と、5桁の英数字からなる「テーマコード」がかならず付与されています。
現在ではすべての技術分野のうち、およそ7割程度の分野でFタームが整備されています。技術動向の変化や文献増加に応じて、毎年必要な分野でFタームの見直しが行われています。
Fタームについても、IPCと同様に以下ページの「詳細」タブから実際の分類を確認できます。
https://search.tokkyo.ai/pat/PT_2010289253
「FI」とは
FI(File Index)とは、後述するIPCの利用を円滑にする目的で、日本の特許庁が採用している独自の特許分類です。
FIが作られた背景には、技術面における諸外国と日本の差があります。たとえば諸外国よりも進んでいる技術や日本特有の技術の場合、IPCをそのまま利用すると莫大な特許文献が集中してしまい、特許検索に支障をきたす可能性があります。
そこで日本では、一般的に IPCの分類を細分化したFI記号が活用されています。具体的に FI記号は、IPCに展開記号または分冊識別記号を付加する形で作られています。
展開記号とは、 IPCの最小単位である「グループ」をさらに細かく展開する目的で用いられる記号であり、100から始まる3桁の数字となっています。一方で分冊識別記号とは、IPCや展開記号をより細かく展開する目的で用いる記号であり、「I」と「O」を除くA~Zのアルファベット1文字となっています。
なおFIに関しては、技術の進展や文献数の増加などに応じて、検索精度や効率を維持する目的で、年2回追加や廃止、更新などの改正が行われています。また、新規でFIを作成した際には、以前のFI記号が付された文献に新しいFIを付与する作業(再分類)が行われます。
FIについても、IPCと同様に以下ページの「詳細」タブから実際の分類を確認できます。
https://search.tokkyo.ai/pat/PT_2010289253
特許分類を用いた分析手法
特許検索の方法は、「テキスト(文字)検索」と「特許分類(FI、Fターム、IPC)検索」の2種類に大別されます。
今回紹介したFIやFターム、IPCを使った特許検索には、以下のメリットがあります。
- 形状や位置関係などの言葉で表現しにくい技術を調査できる
- 古い文献も検索可能である
- 検索漏れや関係のない検索結果が生じる事態を回避しやすい
つまり、テキスト検索と比べてより詳細かつ正確に特許の調査・分析を行えるのです。
しかし一方で、特許分類を用いた検索には下記のデメリットもあります。
- 特許分類に対する理解が不可欠である
- 最新技術に関しては整備されていない場合がある
特に大きなデメリットが1つ目です。便利ではあるものの専門的な知識を要するため、特許検索の初心者が使いこなすのは難しいと言えます。
実際に特許分類を用いた検索をする
無料で使える特許検索エンジン「Tokkyo.Ai」を使うと、簡単に特許分類を用いた検索をすることができます。
キーワード検索をしたのちに、「検索結果フィルタ」からIPCやFタームなどの特許分類を使った絞り込みを行うことができます。特許分類を使って、よりほしい検索結果を得られることがあります。
また、検索窓横の「詳細検索」から「項目別検索」を選ぶと、IPCなどの特許分類とキーワードを組み合わせた検索をすることができます。
検索エンジンTokkyo.Aiはこれらの機能を無料で使うことができるので、企業分析・特許分析にご活用ください。
参考:無料の新しい特許検索エンジン「Tokkyo.Ai」で競合企業をチェックする方法
まとめ
「FI」、「Fターム」、「IPC」は、それぞれ作られた経緯や活用する目的などが異なります。こうした特許分類を活用すれば、より高精度に特許の検索や分析が可能となります。しかし専門的な知識を要するため、弁理士などの専門家に調査を依頼する必要が生じる可能性もあります。
FI、Fターム検索の方法についてはヘルプから