近年IT、IOT、AIなど新しい技術を応用した商品やサービスがどんどん誕生しています。これらの事業を始める際に、最初に行わなければならないのは何と言っても事業に関わる知的財産、特に「特許」への対応です。
知財担当者、研究員、開発担当者などが特許を出願する前には、ターゲット分野の先行特許を調査し最新動向を把握、公開されている類似特許のチェック、競合他社の特許出願状況のチェックなどを行います。
その際に、多くの担当者が利用するのは無料特許検索サービスです。数ある無料特許検索サービスの中から、今回は特許検索のデフォルト的存在の「J-PlatPat」、ワールドワイドの特許をカバーする「Google Patents」、今年からサービスを開始した次世代型の特許検索サイト「Tokkyo.Ai」というタイプの異なった3つのサイトについて詳しくご紹介します。
日本国内のサービス
Tokkyo.Ai
名称 | Tokkyo.Ai |
運営会社 | Tokkyo.Ai株式会社 |
本店所在地 | 東京都港区 |
アドレス | https://www.tokkyo.ai/ |
沿革 | 1995年に創業したAOSグループのグループ企業。 2021年2月にTokkyo.Aiのサービスを開始。 |
Tokkyo. Aiは、検索窓にキーワードを入力するだけで知財部だけではなく経営陣、マーケティングや商品開発部など知財の専門ではない部門においても簡単に高度な知財検索をすることができる無料の特許検索サイトです。
検索については簡易検索、詳細検索、計算式検索と多様な検索用法が用意され、高度な分析も可能なので、さまざまな場面において問題解決のためのシーズとして活用することができます。 さらに、有料の「プライベート検索プラン」では、情報漏洩を防ぎながら本格的な検索や分析が可能です。
検索だけでなく分析も得意とするTokkyo.Aiでは競合企業の調査や、弁理士の過去出願情報の調査をすることもできます。
また、検索結果の表示上限もないため、何万件でも特許の検索・分析を行うことができます。
参考記事:「Tokkyo.Ai」で競合企業をチェックする方法
参考記事:無料の特許検索エンジンTokkyo.Aiの「弁理士検索機能」
検索方法
【 キーワード検索 】
最大の特徴は、専門的な知識がなくてもキーワード入力だけで高度な検索ができることです。検索カテゴリーも、J-PlatPatと同様に「特許」「実用新案」「意匠」「商標」が選択できる他に、「審判」データも同様に検索することができます。
【 詳細検索 】
詳細検索では検索式を作成したり、特許分類を用いた検索、期間の指定や、企業名発明者名などでの絞り込みを行うことができます。
参考記事:「Tokkyo.Ai」で競合企業をチェックする方法
充実した分析機能
Tokkyo.Aiの大きな特徴として、検索だけでなく分析も行うことができる点が挙げられます。
ワンクリックで特許の出願傾向や引用情報、パテントマップの作成等を行うことができます。
以下の記事では、実際に「ブロックチェーン」の技術動向の調査と用途分析をしているので気になる方は要チェックです。
参考記事:「特許からみる「ブロックチェーン」の技術動向と用途とは」
これらのようなビジュアライズ機能を活用し、知財情報を俯瞰的にキャッチアップしましょう。
J-PlatPat
基本情報
名称 | J-PlatPat |
運営会社 | 独立行政法人 工業所有権情報・研修館(INPIT) |
本部所在地 | 東京都港区虎ノ門 |
アドレス | https://www.j-platpat.inpit.go.jp |
沿革 | 1887年に特許庁内の組織としてスタート 2001年に独立行政法人として新スタートし現在に至る |
J-PlatPatは、独立行政法人工業所有権情報・研修館(INPIT)が提供する、無料の産業財産権情報の検索サイトで、明治以来、特許庁が発行してきた「特許・実用新案」「意匠」「商標」に関する公報や外国公報、及びそれぞれの出願の「経過情報」などを提供しています。
また、検索機能やユーザーインターフェースも充実しており、特許庁システムと連携していることから、日本の特許検索サイトのデフォルト的存在となっています。
検索方法
【簡易検索】
詳細な条件を指定せず、キーワードや番号を入力するだけで簡単に特許検索が行えます。また、自動絞り込みを選択すると3,000件を超えた場合、自動的に日付で絞り込んだ検索結果を表示することができます。
【番号検索】
出願番号、公開番号、公告番号、特許審判番号などで特許検索ができます。
この際、日本以外に米国、EPO、WIPO、中国、韓国などを含めて世界12の国または発行機関の指定ができます。
【 特許OPD(ワン・ポータル・ドシエ)照会】
これは2016年7月に追加された機能で、J-PlatPatの大きな魅力の一つです。出願番号、公開番号、特許番号などを入力することで、5大特許庁(日本、米国、欧州、中国、韓国)やWIPO-CASEに参加する複数の特許庁に出願されたパテントファミリーの手続や審査に関連する情報(ドシエ情報)を参照でき、引用文献情報や特許分類情報を一括参照する機能もあります。
【キーワード検索】
書誌的事項、国際特許分類(IPC)、日本独自の特許分類(FI、F ターム)、要約、請求の範囲及び公報全文、出願人、発明者、代理人など20項目のキーワードから文献を検索できます。
【論理式検索】
先の「特許検索」の操作で検索した条件を論理式に保存し、それを利用して繰り返し検索することができます。
その他の機能
【表示モード選択】
標準は「日本語」ですが「英語」に切り替えることも可能です。
【 特許分類照会(PMGS)】
キーワードを入力し「FI」「Fターム」「IPC」などの分類を検索できます。
【 審決検索 】
キーワードや審判番号などで「審決」「判決公報」を検索することができます。
【 出力方法 】
1.CSV出力
2.PDFダウンロード(複数文献の一括ダウンロードも可)
サポート体制
日本で最も歴史の長い検索サイトで検索方法が分かりやすく、利用者に対するサポート体制も充実しています。例えば、マニュアル、各サービスの利用方法、講習会、検索エキスパート研修など積極的な普及に努めているところが他の検索サイトに対する大きなアドバンテージとなっています。
課題
基本的な情報を標準的な形で検索・利用するように設計されており、情報の内容や検索機能はベーシックなものに限定されています。サポート体制は十分すぎるものがありますが、高度な検索やそのデータを利用した分析が必要な場合には民間の特許検索サイトの併用が求められます。
海外のサービス
Google Patents
基本情報
名称 | Google Patents |
運営会社 | 米国 Google |
本部所在地 | 米国 カリフォルニア州 |
アドレス | https://patents.google.com |
沿革 | 2006年にGoogle Patent Searchとしてスタート 2015年に新バージョンとしてGoogle Searchがスタート |
Google Patentsは、米国Googleが米国特許の検索からスタートし、徐々に対象範囲を拡大、2016年からは105の国・機関をカバーするようになりました。マレーシア、インド、インドネシア、ベトナムなどの東南アジアや中東・中南米などの新興国も検索対象に含まれており、今回の3つの検索サイトの中では最も広範囲の特許検索が可能です。
また、全文検索できる国・機関も多く、特に米国特許に関しては、古い年代の特許の全文検索も可能となっており、無料ではありますが、ワールドワイドの特許調査に関しては高いポテンシャルを持った特許検索サイトと言えます。
検索方法
【キーワード検索】
Google Patensは、出願番号、公開番号、発明者などを入力するキーワードによる「簡易検索」が標準となっています。また、日本語で出願した特許は日本語・英語の両方で検索が可能です。
【高度な検索(Advanced Search)】
検索に使用できる主な項目は次の通りです。
1.検索ワード
2.優先権出願日、出願日、公開日
3.発明者
4.譲受人
5.出願した特許庁(100庁以上の中から選択可能です)
6.出願した言語(16言語)
7.登録、出願の別
その他の機能
【表示モード選択】
標準は「英語」ですがGoogle Chromeの「Google Translate」機能を使うと「日本」に切り替えることが可能です。
【 先行技術検索(Find Prior Art)】
検索した特許の先行文献を自動検索することができます。
【 類似特許検索(Similar)】
検索した特許の類似特許を自動検索することができます。
【 特許関連情報 】
各特許の権利範囲と明細の下部に「引用文献」「被引用文献」「類似文献」「経過情報」「優先順位及び関連特許」「類似コンセプトの件数」が設けられています。
【 審決検索 】
特許検索の他に、キーワードや審判番号などで「審決」「判決公報」を検索することができます。
【 出力方法 】
1.CSV出力
2.PDFダウンロード
課題
非常に手軽に特許検索ができ、主要国以外に新興国も広くカバーしているのが特徴の検索サイトですが、類似キーワードも同時に検索してしまいます。また、利用ガイドが無く、日本語表示では自動翻訳が少しおかしいところや英語の部分も残っているので初めての人は戸惑うかも知れません。
補足ですが、ブラウザーをMac標準の「Safari」にして翻訳機能を使い「日本語」にすると検索機能が働かないので「Google Chrome」での利用が推奨されます。
まとめ
日本国内特許の検索サービスからスタートした「J-PlatPat」、米国特許の検索サービスからスタートした「Google Patents」、分析機能も重視し開発された次世代の検索サイト「Tokkyo.Ai」の特徴を解説してきました。これら3つのサイトにはそれぞれに長所・短所があります。しかし、いずれも無料にもかかわらず非常に高いポテンシャルを持っており、バージョンアップも随時なされています。
目的に応じてこれらを使いこなせば、知財部や開発部門などの専門職だけでなく、経営陣やマーケティング部門の人にとっても十分に満足できる結果が得られるでしょう。