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ソフトウェア開発契約における知的財産権の取扱いについて~著作権編その2~

ソフトウェア開発契約では、作成されたプログラムや資料等の著作権の帰属について定めておくことが不可欠です。著作権については、当事者の一方に単独で帰属させるのが通常ですが、両当事者の共有とすることもあります。もっとも、これに関するルールをよく知らないまま著作権を両当事者の共有としてしまうと、

いずれの当事者にとってもデメリットの多い契約となってしまうおそれがあります。

そこで今回は、著作権を両当事者の共有とした場合に適用される著作権法65条を中心に解説していきます。

1.著作権法65条…共有者全員の同意・合意がないと持分の譲渡や行使ができません

著作権法
第六十五条 共同著作物の著作権その他共有に係る著作権(以下この条において「共有著作権」という。)については、各共有者は、他の共有者の同意を得なければ、その持分を譲渡し、又は質権の目的とすることができない。
2 共有著作権は、その共有者全員の合意によらなければ、行使することができない。
3 前二項の場合において、各共有者は、正当な理由がない限り、第一項の同意を拒み、又は前項の合意の成立を妨げることができない。
4 前条第三項及び第四項の規定は、共有著作権の行使について準用する。

※参考
第六十四条
(省略)
3 共同著作物の著作者は、そのうちからその著作者人格権を代表して行使する者を定めることができる。
4 前項の権利を代表して行使する者の代表権に加えられた制限は、善意の第三者に対抗することができない。

【著作権法65条の内容】

<1項>

著作権を共有とした場合、ある共有者の持分を譲渡したり、これに質権を設定したりするためには、他の共有者の同意が必要となります。

例えば、開発したプログラムの著作権を委託者と受託者の共有とした場合において、委託者が第三者に対して自己の保有する持分を譲渡しようとするときは、当該譲渡について受託者の同意を得る必要があります。反対に、受託者による譲渡の場合は、委託者の同意が必要となります。

<2項>

著作権を共有とした場合、共有者全員の合意がなければ、これを行使することができません。ここにいう「行使」には、他人に対する利用許諾だけでなく、共有者自身による利用行為も含まれるとされています。

例えば、開発したプログラムの著作権を委託者と受託者の共有とした場合、第三者に対して当該プログラムの利用を許諾したり、当事者の一方が当該プログラムを改変したりするためには、両当事者の合意が必要となります。

なお、著作権侵害を理由とする差止請求や損害賠償請求等については、他の共有者の同意を得ていなくても、単独で行うことができます(著作権法117条)。

<3項>

著作権を共有とした場合、各共有者は、「正当な理由」がない限り、1項の同意を拒んだり、2項の合意の成立を妨げたりすることはできません。

この規定があれば実務上の支障はないだろうと思われるかもしれませんが、具体的に何が「正当な理由」に当たるのかについては議論があるため、両当事者間において「正当な理由」の有無を巡る争いが生じる可能性は否定できません。

<4項>

著作権を共有とした場合、共有者全員の合意により、著作権を代表して行使する者を定めることができます。ただし、当該代表者の代表権に制限を加えた場合、当該制限の存在を善意の第三者に主張することはできません。

2 著作権を共有とする場合の対応

あえて著作権を共有とする場合は、1記載のルールを踏まえたうえで、円滑な著作権の行使を可能とし、かつ、後のトラブルを防止するような契約書の文言を考える必要があります。以下では、参考として、契約書の文言を考える際の検討ポイントをいくつかご紹介します。

【検討ポイント】

① 著作権の持分割合

著作権の持分割合については、民法250条によって均等と推定されるのが原則ですが、契約書においてこれと異なる定めを置くことも可能です。持分割合に関する定めは、持分を譲渡したり著作権侵害を理由とする損賠賠償請求をしたりする際の価額算定に役立ちます。

② 一定の行為に関する事前の同意・合意

一定の行為に関してあらかじめ同意・合意する旨の条項をソフトウェア開発契約に設けておけば、開発契約締結後に再度交渉して相手方の同意を得たりすることなく、当該行為をすることができるようになります。逆に、トラブル防止のために、一定の行為については必ず同意・合意が必要である旨を明記しておくことも考えられます。

③ 著作権の移転・行使等に関する支払い義務

支払い義務がある場合はもちろんのこと、義務がない場合でも、トラブル防止の観点から、支払い義務がない旨を契約書で明記しておく必要があります。また、例えば「本条に基づく著作権移転の対価は委託料に含まれているものとする」といった形で、対価を委託料に含めておくこともあります。

著作権法はこちら:

https://legalsearch.jp/detail/law?law_info=345AC0000000048&keyword=%E8%91%97%E4%BD%9C%E6%A8%A9%E6%B3%95