知財は自分たちで活用するだけでなく、他社に使用させることで利益を生み出すこともできます。
この記事では知財マッチング分野において必ずといっていいほど成功事例として名があげられる「川崎モデル」について解説します。
川崎モデルとは
川崎モデルとは、神奈川県川崎市が行っている、大企業の開放特許を活用した中小企業の自社製品開発支援事業の通称です。
ひとことでいうと、大企業や研究機関が保有する開放特許等の知的財産を中小企業に紹介し、中小企業の製品開発や技術力の高度化、高付加価値化を支援するといったものですが、川崎市はこの事業を通して、大企業の「知」と中小企業の「技」をマッチングさせ、「地域産業の活性化」の実現を掲げ、令和3年3月末時点で成約39件、製品化27件を実現しています。
(引用元:https://www.city.kawasaki.jp/280/page/0000017805.html )
このモデルの特徴は、企業間交流の場を設けるだけでなく、川崎市産業振興財団の「知的財産コーディネータ」が、企業間のマッチングから契約交渉、事業化まで一貫したサポートを行うという点にあります。
上記HPにおいて、サポートの内容として以下が挙げられています。
- 製品像・事業化計画の具体化
- 大企業とのマッチング
- 契約交渉の代行と手続き支援
- 製品化支援(開発パートナー探し、性能評価など)
- 資金獲得支援(公的助成制度活用など)
- 事業化支援(広報媒体作成、特許等出願、販路開拓など
では、具体的なマッチングまでの流れについて紹介します。
マッチングまでの流れ
大企業と中小企業のマッチングの方法は大きく分けて3つのパターンが想定されています。
①「オープン型交流会」・・・複数の大企業+複数の中小企業で交流を支援(年1回)
②「クローズ型交流会」・・・大企業1社+特定少数の中小企業の交流を支援(年4回程度)
③「個別コーディネート」・・・中小企業と大企業1対1マッチングを支援
ニーズとシーズがマッチしそうということであれば、次は条件の交渉に入ります。
何のために事業を行い、どのようにして技術を活用するのかといったイメージを双方ですり合わせます。条件が概ね決まれば、実際に契約締結へと進んでいきます。
しかし、契約の締結をしたからといってそれで終わりではありません。
むしろそれははじまりで、そこから実際に試作製品を開発したり製品化するまでの道のりが待っています。
そしてさらに川崎市の「知財コーディネータ」のアドバイスを受けながら事業化を目指していきます。
これによって、中小企業が活性化され、大企業にもロイヤリティが入り、結果として市の税収も上がり、「三方良し」という部分も睨んでいるようです。
中小企業のメリット
なんといっても大企業と提携できる点がメリットとして挙げられます。
製品において、「○○社の特許を使っています」と謳うこともできる場合があるためその効果は絶大です。
これまで参加した企業をざっと見るだけでも、
富士通、東芝、日本電気、日立製作所、日産自動車、パイオニア、味の素、ミツトヨ、NHKエンジニアリングシステム、日本電信電話、出光興産、日本ハム、キャノン、中国電力、富士通セミコンダクター、イトーキ、シャープ、京セラコミュニケーションシステム、ソシオネクスト、富士ゼロックス、トヨタ自動車、シーメンス、荏原製作所、パナソニック、三井化学、日新製鋼、KDDI、ポリプラスチックス、キューピー、本田技研工業、新電元工業、アネスト岩田、JR東日本、中部電力、森永製菓、日本無線、ヤマハ、関西電力、リコー、野村総合研究所、富士通アドバンスエンジニアリング・・・
といった名だたる大企業の名前がずらっと並んでいることが分かります。
これらの企業と提携し、技術提供を受けることは中小企業にとってチャンスとなります。
また、大企業と提携することで、技術的な支援や中小企業が陥りやすい経営資源の不足といった問題が解決する可能性もあります。
大企業のメリット
大企業としては知財でロイヤリティ収入を得られることが最大のメリットですが、CSR<corporate social responsibility(企業が組織活動を行うにあたって担う社会的責任のこと)> の一環として実施するといった側面があります。
キーになる「知財コーディネータ」とは
このマッチングに欠かせない存在として「知財コーディネータ」という役割があります。
大企業と中小企業における適切なマッチングを支援する存在として、マッチングから契約条件の摺り合わせ、知財活用の最適化のためのアドバイスを行います。
(引用元:「川崎市産業振興財団HP」https://www.kawasaki-net.ne.jp/chitekizaisan/ )
知財コーディネータは、大企業などにおいて知財活用に長年携わってきたプロフェッショナルから構成されているので安心してアドバイスを受けることができます。
成約企業とその内容
川崎モデルからはこれまで数十件のマッチング事例が誕生してきました。
リストをざっと見るだけでもかなりのマッチング事例があることが分かります。
(引用元:https://www.city.kawasaki.jp/280/cmsfiles/contents/0000017/17805/reiwa3chizaipannfu )
知財を活用し、企業価値アップへ
このような知財マッチングの取組みや事例を研究し、自社の価値を向上させるための施策を検討してみてはいかがでしょうか。
Tokkyo.Aiにおいても知財活用のための情報発信や場の提供を行っています。
自社の知財を活用、あるいは他社の知財を活用してみませんか?