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知的財産を活用するための「オープンイノベーション」って?

特許などの知的財産を有効活用するには、オープンイノベーションという手法が役立ちます。今回の記事では、オープンイノベーションの意味やメリット・デメリット、事例をご説明します。

オープンイノベーションとは

はじめに、オープンイノベーションの意味と重視される背景をご説明します。

オープンイノベーションの意味

オープンイノベーションとは、社内外の境界を無くし、自由に知識や技術などをやりとりすることでイノベーションを創出する手法です。言い換えると、外部機関から知識や技術を取り入れながらイノベーション創出を目指すことです。

オープンイノベーションが重視される背景

一昔前まで、日本企業では社内のみで製品・サービスを開発する「クローズドイノベーション」が一般的でした。

しかし近年は、技術の進歩による製品ライフサイクルの短命化や消費者ニーズの多様化により、社内のみでは社会に大きなインパクトを与えるイノベーションを創出することが困難となってきました。

こうした事情から近年は、大企業やベンチャー企業を中心に、社内外の機関と積極的に連携を図り、消費者のニーズや時代背景に合うイノベーションを創出しようとする動きが活発化しています。

オープンイノベーションとクローズドイノベーションの違い

前述したとおり、クローズドイノベーションとは「自社の組織内でイノベーションの創出を完結させる手法」です。

オープンイノベーションとクローズドイノベーションには、以下の違いがあります。

オープンイノベーションクローズドイノベーション
イノベーションの創出方法社外の機関との連携自社のみで完結
顧客に対する考え方イノベーションの創出に役立つ協力者イノベーションの受け手
知的財産の扱い社外企業との相互活用もあり得る自社で独占
利点・時代の流れに適応しやすい
・成長速度が速くなる
・利益が手元に多く残る
・情報流出を防ぎやすい
欠点情報流出のリスクがある莫大なコストや時間がかかる

オープンイノベーションを活用するメリット

オープンイノベーションを活用すると、以下に挙げた3つのメリットを期待できます。

・事業成長のスピードが加速する

外部企業・機関が持つ知的財産や人材などを活用できるため、自社のみで事業を行う場合と比べて、事業成長の速度を速めることが可能です。

・外部の技術や知識を活用できる

外部企業と連携を図ることで、これまで自社になかった知識や技術を活用して事業を行えます。自社になかった知識や技術の活用により、自社のみでは思いつかない新製品・サービスを創出したり、事業の収益性を大幅に高めたりする効果が期待できます。

・新製品・サービスの開発コスト・リスクの削減

自社のみで新製品・サービスを開発する場合、消費者に提供できるようになるまでに莫大な費用や時間がかかります。一方で外部企業と連携すれば、新製品・サービス開発に必要な費用や業務を分担できるため、コスト削減につながります。

また、自社で負担するコストが少ないため、万が一失敗した場合に大きな損失をこうむるリスクも軽減できます。

オープンイノベーション活用の注意点

オープンイノベーションの活用に際しては、以下の点に注意が必要です。

・情報や技術の流出リスクがある

オープンイノベーションを実施するにあたっては、外部の企業と情報や技術のやりとりを行う必要があります。そこで注意したいのが情報や技術の流出リスクです。

相手企業の情報管理が甘いことで、自社の機密情報が流出し、顧客や取引先に迷惑をかけるリスクがあります。また、提携先の企業が自社の収益源となっている技術を活用することで、顧客を奪われる事態も考えられます。

情報流出を防ぐ取り組み(秘密保持契約の締結など)を行ったり、収益源の技術情報を相手に伝えないなどの対策が必要です。

・顧客の立場を無視したイノベーションとなり得る

あくまでオープンイノベーションの目的は、顧客に買ってもらえる新製品・サービス、および関連する技術等の開発です。

提携することや技術開発を最終的な目的にすると、顧客の立場を無視したイノベーションとなり得るので注意しなくてはいけません。そうなると、せっかく作った新製品・サービスが顧客に受け入れられず、費やしたコストや時間が無駄となってしまいます。

P&Gによるオープンイノベーションの事例

最後に、オープンイノベーションの事例としてP&Gの製品開発を取り上げます。

P&Gは、グローバルに事業を展開する日用品の製造メーカーです。P&Gがオープンイノベーションによって開発した商品として有名なのが「プリングルス」というお菓子です。

一時期、プリングルスの売れ行きは悪化していました。そこでP&Gは、イタリアの教授が開発した食品用インクジェットプリンターを活用し、イラストが描かれたプリングルスの販売を始めました。

イラストを書いたことが功を奏し、プリングルスの売り上げは大幅に増加したと言われています。

まとめ

P&Gの事例から分かるように、オープンイノベーションは事業の成長に大きく貢献する施策です。たとえ優れた知的財産を持っていても、社内のみで有効活用することには限界があります。

大きく事業を成長させたい場合や、現在の知財戦略が行き詰まっている場合には、ぜひオープンイノベーションの活用を検討してみてください。