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SNSユーザー必見!あなたの写真がAIに勝手に学習される?問題点を解説

ChatGPTをはじめとする生成型AIは瞬く間に普及し、今や多くのユーザーに使用されるようになりました。しかし、新しいテクノロジーは私たちの生活に利益をもたらす一方で、様々な問題を生み出しています。

今回は、画像生成AIがインターネット上の画像を自動的に学習し、生成することの問題点について解説します。

画像生成AIとは

画像生成AIとは、イメージをテキストで入力することによりAIが自動で画像・イラストを生成するソフトウェアです。2022年6月にMidjourneyが、その2か月後にStable Diffusionがリリースされ、これらは画像生成AIが普及した契機のうちの一つだといわれます。

ほかに画像生成AIとして、Novel AI、Leonardo.Aiなど様々な種類があり、各サービスが異なる特徴を有するため、ユーザーは目的や好みに応じて各種画像生成AIを利用します。

何が問題となっているのか

画像生成AIが普及すると同時に、無断で他人の画像が利用・学習されているという事態が発生しています。

〈Getty ImagesによるStability AI提訴〉

2023年2月3日、画像生成AIのStable Diffusion開発元であるStability AIが、AI学習で画像を無断使用したとしてストックフォトサイトGetty Imagesに提訴されました。

Getty Imagesは、著作権で保護された数百万の画像及び同社が所有・代理する関連メタデータを、ライセンスなしでStability AIが不法にコピーしAIで処理したとして、商標侵害を理由として損害賠償請求をしているとのことです。

〈米アーティストによる集団訴訟〉

2023年1月、アメリカ合衆国在住のアーティストらが、自己の画像が無断で使用され著作権が侵害されたことを理由として、画像生成AIの開発元であるStability AI、Midjourney、DeviantArtの3社に対し、損害賠償と被害防止のための差止めを求める集団訴訟を起こしました。

原告側の主張によると、アーティストの同意を得ていないことに加えて、クレジット表記や補償もないまま無断でイラストを利用され、画像生成AIがそれらに似た画像を生成しているといいます。

問題の背景と影響

このように無断でデータが使用されトラブルが生じる背景には、画像生成AIの仕組みがあります。

〈画像生成AIの仕組み〉

画像生成AIは、ディープラーニング(深層学習)という機械学習により多数の画像を読み込み、指示に応じて画像を生成します。

そして、ユーザーは「りんごを食べる人」「夜」「2足歩行の巨大な猫」「ゴッホ風」など指示を入力し画像を生成させます。このような文章・単語による指示は「プロンプト」と呼ばれ、プロンプトによって生成される画像が異なります。

上記の集団訴訟における原告の1人は、画像生成に使用された作品一覧に自己の名前が含まれていることを度々確認したといいます。アーティストの氏名をプロンプトとして入力することで、そのアーティストの作品を模倣した画像を生成することも可能です。

このように、画像生成の前提である機械学習の過程で、インターネット上の画像が無断で使用されてしまいます。

〈影響とリスク〉

画像生成AIの機械学習において使用されるのはイラスト等の作品に限らず、インターネット上にアップロードされた個人の顔写真なども含まれます。

2022年9月、あるAIアーティストは、病院での治療中に撮影された自己の写真がAIの学習用データとして利用されていることをTwitterで報告しました。このAIアーティストは、顔の手術を受けた際に外科医が撮影した顔写真がネット上に流出し、それが画像生成AIの学習に使用されたと推測しているといいます。

このように、インターネット上にアップロード・流出した個人の顔写真等が画像生成AIに学習されることで、著作権のみならず個人のプライバシーが侵害されるおそれがあります。

法的観点からの考察

画像生成AIが無断で他人のデータを利用し画像生成することは、主に著作権法との関係で問題があります。

〈著作権侵害のおそれ〉

日本の著作権法上、作品をAIに学習させることは、著作権者の許諾がなくとも許されています。もっとも、AIにより生成した画像を販売する場合、既存の著作物との類似性や依拠性が認められた場合などは、著作権法違反となるおそれがあります。

仮に既存の著作物と知らなかったとしても、それは著作権侵害を否定する理由となりません。

〈現状の法制度では規制が困難〉

しかし、原状の日本における法制度では、原則としてAIによる画像生成のための学習に著作物を利用することが許されています。この利用は、営利・非営利を問わず認められます。

著作権法30条の4
著作物は、次に掲げる場合その他の当該著作物に表現された思想又は感情を自ら享受し又は他人に享受させることを目的としない場合には、その必要と認められる限度において、いずれの方法によるかを問わず、利用することができる。ただし、当該著作物の種類及び用途並びに当該利用の態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りでない。
一 著作物の録音、録画その他の利用に係る技術の開発又は実用化のための試験の用に供する場合
二 情報解析(多数の著作物その他の大量の情報から、当該情報を構成する言語、音、影像その他の要素に係る情報を抽出し、比較、分類その他の解析を行うことをいう。第四十七条の五第一項第二号において同じ。)の用に供する場合
三 前二号に掲げる場合のほか、著作物の表現についての人の知覚による認識を伴うことなく当該著作物を電子計算機による情報処理の過程における利用その他の利用(プログラムの著作物にあつては、当該著作物の電子計算機における実行を除く。)に供する場合

そのため、クリエイターが自己のイラストを画像生成AIに利用することを禁じていたとしても、法的拘束力を持たせることができません。

日本新聞協会は、報道機関の記事・写真が無断で使用されるおそれに言及し、著作権法や個人情報保護法等、生成型AIに対して適切な法制度の枠組みを整備する必要性があると述べています。

内閣府や文化庁などの「AI戦略チーム」は、生成AIによる著作権侵害について議論しており、今後の法整備に注目が集まります。

対策とアドバイス

画像の無断使用の有無を確認するツールもありますが、まずはインターネット上に画像をアップロードする際に無断使用のおそれに注意することが重要です。

〈自己の作品が使用されたかどうかを確認するツール〉

自己の作品が画像生成AIに勝手に使用されていないかを確認するための「Have I Been Trained?」というツールがあります。

このツールは、Stable Diffusionに使用されているLAION-5Bという大規模データセットに含まれている画像を検索することができます。

〈画像を容易にアップロードしない〉

ひとたびインターネット上に画像がアップロードされれば、全世界に拡散され、誰でもダウンロード・利用することができます。インターネット上の画像は容易にコピー・使用することができ、元のデータを消去しても無断使用を防止するのは困難です。

そのため、大前提としてインターネット上にむやみに個人のプライバシーにかかわる画像・データをアップロードしないことを心がける必要があります。

AIが作成した文章・イラストの著作権

AIが無断で他人の画像データを学習しイラストを生成する行為が著作権侵害に当たり得る一方、AIが作成した文章やイラスト自体に著作権が認められるかという議論があります。

参考記事:『AIが書いた文章は著作権の対象になる?自然言語処理AIと著作権について解説』

参考記事:『AIが描いたイラストの著作権はどうなる?【ズバリ!わかりやすく解説】』

まとめ

・画像生成AIは、その機械学習においてインターネット上の画像を無断で利用するという問題が生じています。

・海外では、著作権侵害を理由して、画像生成AIの開発元に対する複数の訴訟が提起されています。

・画像生成AIの機械学習の過程で、イラストや作品のみならず、個人の顔写真等が利用されるというプライバシー権侵害のおそれもあります。

・現在の日本における法制度では、機械学習における著作物の無断利用を十分に規制することができず、今後の法整備に注目する必要があります。