まだ市場での認知度が低いスタートアップにとっては、自社の名称を戦略的にマーケティングで活用することはとても効果的です。そこで有効となるのが社名の商標登録です。
今回の記事では、スタートアップが社名を商標登録するメリットと、商標登録する際に注意すべきポイントをわかりやすく解説します。
スタートアップが社名を商標登録する4つのメリット
はじめに、スタートアップが自社の商号を商標登録するメリットを4点ご説明します。
1.自社ブランドを保護できる
社名を商標登録しておくことで、他社は自社の社名と同一または類似する社名や商品・サービス名を自由に使用できなくなります。そのため、社名を用いた商品ブランドを展開する場合、他社に自社ブランドのイメージを侵害されたり、顧客を奪われたりするリスクを軽減できるでしょう。
2.他社商標の侵害を未然に防げる
たとえば自社の商号に用いられている一部の文言について、他社が商標登録をしたとしましょう。
その結果、自社の商号を商品・サービスに用いると、商標登録を行った他社の商標権を侵害することになってしまいます。言い換えると、自社の商号であるにもかかわらず、自由にホームページやロゴ等で使えなくなる可能性があるのです。
そのような事態を防げる点で、社名の商標登録は非常に有用な戦略です。
3.広告効果を得られる
社名を商標登録し、登録した社名を商品・サービス名に用いることで、自社がどのような商品・サービスを提供しているかについて、顧客に理解してもらいやすくなります。
また、社名やサービス名に商標登録している旨を表す「Ⓡマーク」を付与することで、信頼性の向上やイメージアップにつながります。
その結果、商標登録しない場合と比べて、よりスピーディーに自社およびサービスを世の中に広めることが可能となるでしょう。
4.「会社名=ブランド名」とすることで商標登録に要する費用を削減できる
会社名と商品・サービス名を一致させれば、会社名とブランド名で別々に商標登録する必要がなくなります。
商標登録にかかるコストを大幅に減らせるため、予算が少ないスタートアップにとっては大きなメリットとなるでしょう。
商標登録を行うときにスタートアップが注意すべきポイント
商標登録にはたくさんのメリットがありますが、いくつか注意すべき点もあります。
この章では、スタートアップが商標登録する際に注意すべき3つのポイントを紹介します。
1.識別力がないと商標登録できない
商標登録が認められるには、他社商品と自社商品を識別できることが必須要件となっています。そのため、「商品・サービスの一般名称」や「商品・サービスの性質を直接的に表す名称」は、商標権が認められない可能性が高いです。
極端な例ですが、「ラーメン株式会社」という社名は、他社商品との識別力がないため商標権は認められません。社名を商標登録する際は、識別力がある名称となるようにしましょう。
2.実際にビジネスで使用する形態で商標登録する必要がある
商標登録は、実際にビジネスで使用する形態で行うことが重要です。
たとえば、「12345という数字」と「星のイラスト」について、それぞれ別々にビジネスで用いたいケースを考えます。2件分の商標登録にかかる費用がもったいないからといって、「星のイラストの下に12345という数字をつけたロゴ(以下「登録商標」とする)」として商標登録をするとしましょう。
そして、商標登録後に「12345という数字」と「星のイラスト」を別々に使用したとします。この場合、「12345という数字」と「星のイラスト」を別々に使用していると、登録商標を使用しているとはみなされません。
そのため、万が一登録商標と似ている商標の登録を検討している会社が現れた場合、不使用取消審判を請求され、商標登録が取り消されてしまう可能性があります。
上記のような事態を避けるためにも、たとえ費用がかかるとしても、実際にビジネスで使用する形態で商標を1つずつ登録しましょう。
3.社名と商品名のどちらを優先するかを考える
スタートアップの予算は限られているため、会社名と商品・サービス名の両方を商標登録するのは難しい場合があります。その際には、社名と商品名のどちらを優先的に商標登録するかを慎重に検討することが重要です。
たとえば開発しているアプリの利用者を増やしたいならば、社名よりも商品名を優先的に商標登録すべきでしょう。一方で社名の認知度がサービスを拡大する上で重要な要素であるビジネスモデル(飲食店やエステサロンなど)の場合は、社名を優先的に商標登録すべきです。
このように、ビジネスの内容や消費者視点から優先度を検討することが大切です。
まとめ
スタートアップにとって商標登録は、ブランディングや商標の保護などといったメリットを得られる戦略です。
ただし、識別力の確保などいくつか注意すべきポイントがあります。
今回の記事を参考に、ぜひ積極的に商標登録を活用していただけますと幸いです。