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PCT出願とは 国際出願制度について解説

知財に関わっていると、必ずと言っていいほど「国際出願」「PCT」などの言葉を聞くことがあると思います。知財関係の業務をされている方は必ずこれらの言葉の意味を知っておく必要があります

また、直接知財関係の業務を行っていない経営者や企画担当者、製品開発担当者などにおいても、これらの意味を知り、活用することで世界における技術トレンドやプレイヤーを把握することができます。

PCT出願とは

PCT出願とは、特許協力条約(PCT : Patent Cooperation Treaty)に基づく特許出願をいいます。ひとつの出願願書を条約に従って提出することによって、PCT加盟国であるすべての国に同時に出願したことと同じ効果を与える出願制度です。

PCT出願のメリットは以下の通り挙げることができます。

出願手続きの簡略化

PCT出願を行うことで、PCT(特許協力条約)の加盟国へ同時に出願したことと同様の効果を得ることができます。

手続き自体も、国際出願の第一歩となる「申請」について自国での手続きで足りる点が大きなメリットといえます。たとえば、日本企業がPCT出願の手続きをしたいと考えた場合は、PCT出願の願書を日本の特許庁に提出することで、その提出日がPCT加盟国における“国内”出願の出願日となります。しかも、この願書は日本語で提出することができるので、翻訳をする必要もありません(ここはあくまで願書についての話で、現地の国に移行するタイミングで翻訳をする必要があります。詳しくは以下の「具体的な手続きについて」を参考にしてください)。

また、海外への出願制度としてパリ条約に基づく優先権を主張し現地の国に直接出願をする方法もあります。

この方法は、特許を出願したい国に対して個別にそれぞれ出願をするもので、その現地の特許庁に出願をする必要があるので、当然ですが現地の言語に翻訳をする必要があります。しかもこの手続きは優先日から1年以内に完了させる必要があるなど、時間的な猶予も短いです。

この場合と比べると、PCT出願の場合は翻訳をする必要もなく、パリ条約に基づく優先権主張をする際に必要な優先権証明書を提出する必要もありません。

検討する時間が伸びる

PCT出願の大きなメリットとして、検討時間が伸びるという点があります。具体的には、各国への移行手続きを最大30カ月(場合によっては31カ月)も引き延ばすことができます。

この方法をつかえば、企業が市場の動向を見ながら出願する国を選択することもできます。また、特許の文書を翻訳する時間も十分にあるので、質の高い翻訳文を作成することが可能です。

130ヶ国以上の加盟国で、権利取得の決定を留保できる

PCT加盟国は130以上となるため、多くの国で上記メリットを享受できます。

具体的な手続きについて

PCT出願をするためには、まず自国に特許出願をし、その特許出願より1年以内にPCT出願の申請をします。

そして、国際調査を経て、各国の特許庁へ出願していきます。

その際は、各国への「国内移行手続き」が必ず必要になるので注意が必要です。計画的に各国への翻訳を行いましょう。

引用:https://www.digima-japan.com/knowhow/world/16561.php

PCT出願に慣れないうちは専門家にしっかりと聞きましょう

国際出願は、PCT出願(国際出願)をすると、PCTのすべての加盟国に同時に出願したのと同じ効果を得ることができる点で非常に有用です。

しかし、費用対効果という面においての検討も必須です。

参考:手数料と支払 – PCT制度(https://www.wipo.int/pct/ja/fees/)

たとえば、現状の費用を参考にすると、国際出願をしようと考えている国が3カ国以下の場合は、パリ条約に基づく優先権主張を利用し海外に出願するほうが価格は安くなります。

これに代理人費用や、翻訳文の作成費用などが加わるため、企業が国際出願をするためのハードルは決して低くないというのが現状です。

まずは、国際出願を多数経験している専門家にしっかりと話を聞き、費用感について見積もりを出してもらうということが国際出願の第一歩ともいえるでしょう。

グローバルでの成功を考えるのであれば避けて通れない「国際出願」

企業が海外に進出するうえで避けて通ることができないのが「国際出願」ではないかと言えます。国内においても自社の技術を守ることは必要性が高いですが、競争相手が増える海外においては、さらに自分たちの技術を守る必要性が高ということができます。

特に、現地の言語に翻訳をした明細書が自社の想定している権利範囲と同様かという点はしっかりと確認をし、慎重に行う必要があります。

国際出願をすることを考えたその日に、すぐに専門家に相談することを強く推奨します。

「国際出願は自分とは関係ない」とは言い切れない・・・

競合企業がPCT国際出願をしているかを確認してみてください。

国際出願がなされると「国際公開」をされ、誰でもその情報を見ることができます。自社は関係ないと思っていても、同業他社がグローバル市場を狙って国際出願を行っている事実を目の当たりにすると無視はできないのではないでしょうか。

WIPO(世界知的所有権機関)が提供する特許データベース検索サービス「PATENTSCOPE」では、公開されている PCT 国際出願 430.6 万件をはじめ、合計 10313 万件の特許文献を検索することができます。こちらも活用して、競合企業の動向をチェックしてみてください。

PATENTSCOPEはこちら:https://patentscope2.wipo.int/search/ja/search.jsf