特許権とは、発明した技術に関して、独占的に利用できる権利です。特に技術力がベースとなるビジネスでは、特許権は事業の成功を左右する重要な要素となり得ます。そこで今回は、特許権を保有するメリットを6つご説明します。
独占的に発明した技術等を利用できる
特許法第68条では、「特許権を保有する者は、業として特許発明の実施をする権利を専有する」と規定しています。「実施」とは、生産や使用、譲渡、輸出・輸入、譲渡の申し出などの行為を意味します。
つまり特許権を保有すれば、特許を取得した製品や技術に関して、自分だけが督戦的に活用できるメリットを得られるのです。特許権を取得することで、せっかくの発明を他社に模倣されるリスクを無くすことができます。
独占的に特許を有する製品や技術を活用できるため、特許を保有しない場合よりも圧倒的に大きな収益を得られるのです。
競合他社の特許権取得を防止できる
特許法第39条では、同一の発明について複数の出願があった場合は、最初に出願した者にのみ特権を付与するとしています。
仮に競合他社と同様の技術を持っている場合、競合他社が先に特許権を取得すると、自社ではその技術を自由に活用できなくなります。その結果、すでに販売していた商品について販売の続行が困難となり、ライセンス料を競合他社に支払う事態になる恐れがあります。
そうした事態を避ける上でも、自社製品の根幹となる技術に関しては、なるべく早めに特許権を取得すべきです。先に特許権を取得すれば、競合他社の特許権取得を防止でき、結果的に前述したような事態を回避できます。 つまり特許権の取得には、収益を増やすだけでなく、安定的に事業を行えるメリットもあるのです。
競合他社の技術開発や新規参入を抑制できる
特許権を取得すると、競合他社の技術開発や新規参入を抑制できるメリットも得られます。
ここまでお伝えしたとおり、特許権が設定された技術は特許権者(特許権を持つ者)しか原則利用できません。
そのため特許権を取得すれば、競合他社は自社の許可なしに自社の技術を基にした技術開発を行えなくなります。その結果、競合他社の技術力向上を阻止するメリットも期待できます。
また、新規参入の企業からしてみると、販売したい製品カテゴリーに特許権がついた製品があることで、自由に製品を開発・販売しにくくなります。そのため、特許権の取得は新規参入による競争激化を阻止するメリットももたらします。
ライセンス収入を得られる
特許権を取得すれば、特許発明を利用する権利を第三者に与えて、ライセンス収入を得ることも可能です。
特許権を取得し、ある製品やその技術を独占的に使って収益を得る戦略も確かに有効です。しかし特許権を独占的に使って利益を得るには、製品の製造や販売に多大なコストがかかります。ですので、開発力だけあって製造や販売に費やす人員や資金を持っていない企業は、特許権を最大限活用することは困難です。
しかし特許発明の利用を第三者に認めれば、自社で製造や販売を行わなくても、ライセンス料だけで十分な収入を得られます。製造や販売に費やせるリソースが不足する企業にとって、ライセンス収入を得られる点は大きなメリットと言えるでしょう。
製品のブランド力や信頼性を高めることができる
特許権を保有する5つ目のメリットは、製品のブランド力や信頼性を高めることができる点です。
そもそも特許権は、革新的で優れた技術であることを証明する意味合いも持ちます。そのため、商品を紹介する際に特許権を取得している旨をアピールすれば、優れた商品であることを顧客に認識してもらえます。 その結果、製品のブランド力を高めて固定客を獲得し多くの顧客から安心して利用できると信頼してもらえるようになります。
資金調達や事業売却などで有利になる
会計やファイナンスの実務上、特許権は無形の固定資産としてみなされます。そのため、特許権を保有していれば自社の有する資産も増えるため、銀行や投資家から資金を投資する価値のある会社とみなされやすくなります。その結果、資金調達を有利に進められるわけです。
また、事業や会社を売却する際にも、特許権は資産の一部として計上されます。そのため、特許権がない場合と比べて、より大きな金額で売却できる可能性が高くなります。
特許権を保有することのメリット:まとめ
特許権を保有するメリットは、単純に製品を独占的に販売し、より大きな売り上げを得ることだけとイメージされがちです。
しかし今回お伝えしたように、ライセンス収入の獲得やブランディングなど、他にもたくさんのメリットがあります。また、資金調達や事業売却を有利に進められる点で、会社全体として得られるメリットも大きいです。
他社にはない革新的な技術を発明した場合には、今回お伝えしたメリットを得るために、極力特許権を取得するのがオススメです。
参考:特許法 e-Gov